幼児教育の中で近年注目されているのが非認知能力と呼ばれるものです。
これはIQや学力テストなどで図れる認知能力と対照的に、忍耐力や社会性、自制心、創造性、自己認識など目に見えないながらも生きていく上で大切とされる力です。
幼少期に向上した認知能力(学力やIQ)は短期的に見れば効果的ですが、8歳前後になると差がなくなってしまいます。
対して非認知能力については将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになってきています。
この記事では幼児教育で注目される非認知能力についてまとめました。
非認知能力は学歴・収入・雇用に大きく影響する

ペリー幼稚園プログラムでは、認知能力では短期間しか効果が出ませんでしたが、非認知能力については大きな影響を及ぼしました。
ペリー幼稚園プログラム
低所得のアフリカ系米国人の3~4歳の子どもに「質の高い就学前教育」を提供した実験。
幼児教育(就学前教育)の必要性について多くのデータが用いられている。
ペリー幼稚園プログラムで就学前教育を受けた子は高校卒業率、持ち家率、所得が高くなっていることがわかっています。
なぜペリー幼稚園プログラムのような就学前教育を行うと上記の結果が出るのでしょうか?
それは就学前の幼児教育によって非認知能力が高まるからだと言われています。
非認知能力の中でも特にその後の人生を左右する大切なスキルがあります。それが「自制心」と「やり抜く力」です。
感情をコントロールする自制心
自制心についての研究では、有名な「マシュマロ実験」というものがあります。
スタンフォード大学内の保育園で4歳児を対象に行われた実験で自制心を測定しました。
この実験では、子どもにマシュマロを差し出し「いつ食べてもいいけど大人が戻ってくるまで我慢できたらもう1つマシュマロをあげる」と伝え15分後に戻ってくるまで我慢できるかという実験です。
実験の結果3分の1の子どもは我慢ができて、残りの子どもは我慢できずに食べてしまったようです。
この子どもたちを追跡して調査したところ高校生になる頃には大きな差が生まれ、我慢できた子はSATのスコアがずっと高くなっていました。
SATとは
アメリカの大学に入学するための共通テスト。
主に認知能力を図る。
この実験から、自制心を高めると認知能力が付きやすく高校や大学への進学率が高くなることが伺えます。
成功にたどり着くためのやり抜く力
「やり抜く力」はペンシルバニア大学の著名心理学者、ダックワース准教授が「成功を予測できる性質」として発表し「GRITグリット」とも呼ばれています。
ダックワース准教授はこのやり抜く力のことを非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質と定義しています。
軍の訓練に耐える。英単語のスペリングコンテストで優秀な成績を修める。貧困地域の子どもの学力を上げる。
このような全く異なった状況でも成功するのは「やり抜く力」が高い人であり、仮に才能があっても「やり抜く力」がないと成功できないとも言われています。
非認知能力を鍛えて高めるためには?

ここまで重要だと言われている非認知能力ですが、生まれつき持っているものではなく鍛えて高めていくことができます。
上記で紹介した「自制心」と「やり抜く力」だけでもまず子どもに持ってほしいですよね?
ここからは非認知能力を鍛える方法について見ていきましょう。
自制心は継続と反復、自己管理で鍛える
自制心を鍛えて高めるためには何かを繰り返し継続的に行うことで鍛えられていきます。
例えば
- 毎朝6時に起きてジョギングをする
- 1日1時間必ず勉強する
- テレビは30分で消す
というような意識しないとしづらいことをちゃんと守り継続的に繰り返すことで自制心が鍛えられていきます。
また、「細かく計画を立てて、記録し、達成度を自己管理する」といったことでも自制心は鍛えられます。
「計画➡️記録➡️自己管理」をしっかりやることがポイントです。
やり抜く力は心の持ちようが重要
やり抜く力は鍛えるというよりも心の持ちようが重要と言われています。
スタンフォード大学の心理学者、ドゥエック教授の研究よると「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」と信じている子どもはやり抜く力が強いことがわかっています。
逆に「年齢とともに記憶力は悪くなる」とか「社会的な身分が低いと成功できない」と考えてしまっている人はその通りになってしまう実験結果もあるようです。
子どもには前者の「能力は努力によって伸ばせる」ということをちゃんと教えてあげたいですね。
幼児教育では非認知能力を伸ばすことも意識しよう
非認知能力を伸ばしていくことは子どもの将来を考えるととても重要なスキルとなります。
ご紹介したように非認知能力は鍛えて高めていくことができるので早いうちから幼児教育の一環として意識させてあげるといいでしょう。
小学校受験などを考える場合も非認知能力は大切です。
お受験には行動観察など非認知能力を見るような検査が各学校で行われています。
非認知能力が高いとこういったお受験の場で力を発揮できる可能性も高くなります。
受験をする、しないに関わらず非認知は人生を成功させるのに重要なスキルです。
子どもの非認知能力を高めるには親が意識して鍛えられる環境を作ってあげましょう!
